-紫翼-
末章:レーヴェヴォール

24.標



 あるところに狂える男がおりました。
 彼は意志に取り付かれておりました。
 何かを成したいという、強い意志――。


 二年前。それは、嵐の日の出来事だった。
 学園長はいつもと同じように執務机に向かっていた。卒業式が無事に終わって年度に区切りがついたものの、これからは新学期を迎えるためにまた忙しくなる。今の内に済ませておいた方が良い仕事はいくらでもあった。どちらにしろ、この嵐では自宅に帰るのも一苦労だ。
 雨粒と暴風に殴りつけられた窓が、がたがたと揺れる。春を告げる嵐を学園長室で聞くようになってから、何年が経ったろう。いつか光を求めて歩き出した日から、彼はその足で地を踏みしめ、ここまで辿り着いたのだ。
 妙な音を聞いたのは、紅茶を口に運んだときだった。はじめは理事長が来たのかと思った。しかし、開け放たれた扉の向こうにある気配は、濁った空気のように動かない。
 学園長は怪訝に思い、念のため護符を懐に忍ばせて立ち上がった。
 廊下は嵐の為に薄暗かった。電灯のついた学園長室から、光の筋が廊下にすっと伸びている。
 扉の元に立ち、光の中から闇に目をやった学園長は息を呑んだ。瀕死の老人が、闇に紛れるようにして倒れていたのだ。
 老人は意識が朦朧としているようで、頭をもたげながら荒い息をついている。見れば肩に深い傷があり、他も至るところで血が滲んでいた。駆け寄った学園長は膝をついてその顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか」
 雨で濡れた老人の顔は、今にも命の灯火が尽きてしまいそうだった。このようなところで傷を負って倒れているなど、只事ではない。警視院に連絡しようと立ち上がりかけたとき、服の裾を掴まれて、学園長は僅かに瞠目した。
「人は、呼ぶな」
 しわがれた声が、枯れ葉のような唇から漏れる。ぽたぽたと水滴を散らせながら、老人の瞳が学園長を見上げた。
「呼ばないでくれ……フェレイ」

 視界が瞬時、白く灼けた。
 五感を通して感知され、回路を以って整理され、そして判断を下す。そうある筈だった一連の処理が音を立てて弾けとび、フェレイ・ヴァレナスはその機能を停止した。
 全ての表情が消えた顔で、老人を凝視する。
 その顔立ち。瞳。声。忘れていた記憶をざわめかせ、思い起こさせる。
 背後に光があるというのに、ひんやりとした薄闇は心を犯すよう。
 滾々と溢れ出す、揺れる木の葉や、囲炉裏の灯、橙の灯りの元で伸びる母の手と。

 記憶が途切れる。
 気がついたら、男は自宅にいた。幼い頃の記憶を塗り潰すような、静かな一軒家。それはありふれた日常を望んだ己を守ってくれる鎧でもあった。
 彼は光を求めて歩き出したときから、一軒家に住むことを望んでいた。一般的な家庭が持っている、ごく普通の家。人に擬態した彼は、それが自分に必要なものだと考えていた。得たところで住む家族もなかったが、彼はその為にあらゆる手を打った。彼が勝ち取った地位も、この家を得るための副産物に過ぎなかったのだ。
 穏やかに揺れる暖炉の灯や、ささやかな緑で彩られた庭、知で塗り固められた書斎。無人の家。しかし孤独は感じなかった。これで少し人に近付けたのだろかと、考えただけだった。
 それに、家には人が多くやってきた。彼は客人たちを紅茶でもてなした。教え子も多くやってきて、長期休業期間になるとそこに住み着いてしまった。彼は賑やかになる家を不思議に思った。彼は自分のいびつさをよく心得ている。確かに最善の様相を取り繕って他人に接したが、その程度で自分が慕われる理由がよく分からなかったのだ。

 そして今は、嵐の中に浮かぶ島となり、昼間だというのに異世界じみた薄暗さに没している我が家に、全身をずぶ濡れにさせた己が立っている。
 客室の寝台に、老人が横たわっていた。どうやってここまできたのか、全く覚えがなかった。ぽたぽたと髪から水滴が零れ落ち、床に染みを穿つ。
 猛り狂う風で家全体が揺れているかのようだった。しかしそれ以外は無音だった。
 何十年も見ていなかった父の体は痩せ細り、艶を失い、別人のようだ。かつ、かつ、と男は寝台に歩み寄る。手当てをせねば危うい命だが、手が出せなかった。胸は滾々と透明な塊を溢れさせるのだが、男にはそれが己の感情であることすら理解出来ない。ただ混乱し、佇立するしかない。
「……ぅ、フェレ……イ」
 長身を横たえた老人が、何かを言っている。瞳を見開き、あらゆる表情を剥落させて男は立ち尽くす。
 老人の肩の辺りから、黒いものがじわじわと寝台を汚していく。命の糧を零しているからだろうか、老境の学者は死に行く者の顔をしている。
 その唇が語る、空白の日々。緑に溢れた故郷で父が忽然と姿を消したあの日からの出来事が、途切れ途切れに紡がれる。

 ――お父さんはね。お父さんは、……死んでしまったのよ。

 ある朝。父が消えた日。母は涙を溜めてそう言い、泣き崩れた。
 あの瞬間、きっと母と自分は闇に突き落とされたのだ。歪みは確かにそこから始まった。
 そして今、体中の色素と水分を失った哀れな老人が目の前に横たわっている。
 父は語る。連れ出された、一人の少年の物語を。
「ユラスと名付けた」
 肺腑に異物が入ったように息苦しくなり、肌にまとわりつく服が余計鬱陶しくなる。体が凍てついたように冷たい。
「助けてやってくれ」
 雷鳴が部屋を白く染め、男の頬を青白く照らす。
 何故自らの鼓動が聞こえてくるのか、男には分からなかった。だが思考するより先に、更に理解しがたい感覚が体中を蝕む。
 痺れたように舌が動かない。視界の焦点が定まらず、呼吸の調子が乱れる。自分の体が鉛のように重たく、一方で酩酊したように平衡感覚がない。


「貴方、何様のつもりですか」


 掠れた声が、乾いた唇から滑り落ちた。自分がどのような顔をしているのか分からなかった。あらゆる抑制を失った体は異常を訴えかけ、けれどどうすることも出来ない。
「貴方が消えてから、母と私がどのような運命を辿ったか知っていますか。私が今、どんな姿で生きているか。貴方はそれを知って、その身勝手を請うのですか」
 それは不気味なほど静かに薄い闇に溶け、空気を一層冷たくさせた。窓の外は暗い。嵐が終わるまで春は来ない。

 そんな息子の姿を、妄執に囚われた父親が見つめている。もう声が届くことはない。
 否。始めから届いてなどいなかったのだ。
 ある女はその男の歪みと傷を知り、愛を以って癒そうとした。しかし彼の狂気を押さえ込むことは出来ず、彼は去り、彼女もまた歪みに犯された。
 あるところに狂える男があった。彼は己の力で何かを成そうと願い続けて、今尚禍々しくそこにある。
「戯言を弄す前に、言うことがあるのではないですか。何故貴方の願いに耳を傾けなければならないのです? 母と私に歪みを植え付けた貴方に!」
 蒼白になった息子の顔に、迸る怒りと憎悪の感情が燃えている。灰色の胎に似た、陽光から最も遠い場所。空っぽの家の片隅で、空虚を満たす何かを求めて彷徨う男の慟哭が矢のように降り注ぐ。
「貴方に力を貸す理由はありません。一人で生きた貴方は全てを失うのが相応しい。そこで一人で朽ちていきなさい」
 老人は唇を僅かに動かしたが、空気を震わす力は既になかった。男は忌々しげにそれを見下ろし、踵を返した。皮膚に重たく張り付くローブを煩わしそうにさばき、荒々しく扉を閉めて闇を断絶する。

 性急な足取りで歩を進め、男は無意識に書斎を目指していた。家の中で最も落ち着く場所として定義していたそこに体を滑り込ませ、後ろ手で鍵を閉める。
 肺腑が空気を求めて喘ぎ、胸が張り裂けそうな程の速さで波打っている。
 そんな己を認識して、男は愕然とした。自分の行動が信じがたかった。何の思考も吸収も挟まずに、迸るものを発露させたのだ。体が炎のように熱く、違和感が血流に乗って全身を暴れまわる。
 これが感情というものだろうか。
 男は無意識に左腕を右手で掴む。いつか、己の心の冷たさを不思議に思って傷つけた部位を。そのときも、心が痺れたのだ。生きる熱が己にもあるのだと、血を見ることで知覚したのだ。
 ならば、なんという皮肉だろう。己の歪みの原点に再会することで、感情を知覚することになろうとは。
 初めて経験する体の変調を苦心して整え、背に扉をつけたまま、男は濃い疲労を感じた。感情を持つということは、酷く体力が要ることのようだ。全身が痺れ、思考力さえ奪っていく。
 濡れた髪で横顔を隠し、男は想いを巡らせる。あの父親をどうするべきだろう。あれではもう長くはあるまい。警視院に引き渡した方が良いだろうか。
 否、と彼の怜悧な頭は瞬時に判断する。父が行った研究には、政府が関わっている。父が己と会ったことを知れば、彼らは機密の漏洩を危惧するだろう。最悪の場合、父と共に自分も闇に葬られるかもしれない。
 そこまできて、ようやく男は老人の話にあった少年の存在を思い出した。父の願いはただ一つ、あの少年が存在し続けることだ。
 願いを叶えてやるには危険すぎた。大陸に持ち込まれた宝珠を使って政府が秘密裏に研究させた人工生命の成功体を引き取るなど。それに、迸った感情は真実であった。幼い頃、母の元から逃げ出したのは父への憎悪を糧にしてのことだった。

 そうだ。父が、もしも行ってしまわなかったら。
 母は、きっと壊れることもなく。
 緑に溢れた田舎町で、何も知らずに日常を過ごして。
 いつまでもそれが続く筈だった。

「――」
 口元を手で覆う。吐き気に近い不快感が胃から喉を焼いた。ぞっとするほど体が頼りないものになっている。蓋をせねば、平穏は訪れまい。
 しかし同時に、恐ろしい思いつきがあった。このまま歪みを引き継いだら。あるいは。
 ――あるいは、この心に感情を息づかせることができるのではないかと。
 その考えを、人間たろうとする彼の思考は嫌悪せよと言った。何も見なかったことにせよ、と理性が囁いた。目を閉じ、心を落ち着け、日常に埋没して行けと。
 鼓動が大きく胸を叩く。いくら息を吸っても足りぬというほどに。人であることを認識させる苦痛。望んだものであり、そして今、忘れてしまいたいとも思う。
 気がつけば、夜の到来に世界は闇に没していた。

 嵐は夜半まで続き、そして朝になって見にいくと、父は事切れていた。

 窓から注ぐ白い光を受ける父の亡骸を見下ろし、男は一度息を吸った。
 体は勝手に動いた。父の所持品を確認し、少年を受け入れる為のあらゆる準備を怠りなく進めた。
 しきりに胸が騒いでいた。憎んだ父の願いを何故叶えなければならないのだと怒りが渦を巻いた。少年など放っておけ。いっそ、父への復讐として殺してしまってもいい。歪みの連鎖の成れの果てに、何故光を与えなければならないのだ。
 それは痛みだった。理に即して動くことの出来ない人間としての苦痛だった。父への憎悪をも塗り潰す渇望だった。
 嵐の去った都市は、暖かな風を受けて目も開けられないほどに輝いていた。ようやく春ですねと語らう人々の全てが華々しい瞬きのように見えた。その光が、この手にも欲しかった。
 まずは父の亡骸を隠すことで一日が終わった。翌日、父が何故か持っていた卒業証に傷を入れ、推薦状と共に封をして学園の管理課の郵便受けに忍ばせた。普段通りに仕事をし、頃合を見計らって都市を抜け出した。
 空を紫の鳥が舞うのが見えた。はっとして鳥の行く先を追うと、父の言った場所へ辿り着いた。
 春の訪れを大地が歌う。やわらかな陽光が降り注ぐ、全ての始まりの場所へ。


 ***


 既見感が、ざわりと首筋を刺激した。血が随分と出ていった後だったが、それでも顔から血の気が引くのを感じた。
 もうふらついた足元を支えてくれる者はいない。彼は自分の成すべきことを見つけ、別たれていった。故に男は一人でその光景を目にしたのである。
 二年前と違うのは光量だけではなかった。散乱した硝子片。床に転々と溜まる紫の液体。女の髪のようにだらりと散らばる無数の黒い管。

 あのときと同じように、紫の少年がそこにいる。


 ***


 川辺に辿り着いたとき、少年は既に意識を取り戻し、崩壊の中にあった。
 闇を引き継ぐのは、己の為と。己の成そうとする罪を、彼は正しく認識していた。
 なのに、不思議だった。
 少年は春の光を吸い込んで眩く輝く紫の髪を振り乱し、細い体を振り絞るようにして嘆いている。いびつな体を嘆く、人間そのものの形を成していた。
 ああ、これは、人だ。
 人は人であるがために、己の歪みを嘆くことが出来る。心を震わせることができる。光を欲することが出来る。
 己の為だ。己を救うという打算を込めて、この体は動く。そう思っていた筈なのに、何故だか慄然とした。焦燥が思考を熱く焼いた。
 駆け寄って、体を起こしてやる。少年は自らの頭を鷲掴みにし、耳をつんざくような叫び声をあげている。
 歪みの先に放り出された頼りない命だ。生かすことも殺すこともできる。しかし己は己を救う為に少年の命を繋ぐ。その筈だった。
 けれど、儚い光を抱きかかえたその刹那。

 助けたい。
 そう思った。

「――私の声が聞こえますか? いいですか、よく聞いて下さい」
 蹲る頭に口元を寄せ、祈るように囁く。震える心を自覚しながら。
「あなたは記憶を失っているのです。あなたはとても悲しい経験をしましたが、それらの記憶を失ったのです。そう、あなたは何も思い出せない。あなたは自分が誰なのかわからない。何処で生まれたのかも、何をしていたのかも、自分の名前さえ――。あなたは忘れてしまったのです。悲しい記憶を忘れてしまったのです」
 ひとつひとつ、ゆっくりと言葉を繰り返す。虚構を事実として少年の脳裏に埋め込んでいく。危険な賭けと分かっていた。成功しようが、いつかは破綻する呪いだ。終わりが来たとき、少年はきっと自分を憎むだろう。歪みは更に広がるだろう。
 しかし、それでも自分ではなくこの少年が、ひと時でも光を見ることが出来るなら。
 ――そうして、そんな彼の姿を、この目で見ることが出来たなら。
 歪みの最果てで、遺された男はこんなにも苦しむ儚い命が輝く様を、心から切望した。
 さわさわと木々が揺れる。春の日差しが降り注ぐ。この世にある全てのものに、輝けと促すように。
 輝けばいいと思う。美しくあって欲しいと思う。それは、狂気の幻想と知っていても望まずにはいられない人の性だ。そうして僅かな望みと夢を他人に託す。男はそんな己を呆然を自覚し、そしてそれを意思とする。
 一度唇を濡らし、今だ苦しむ少年に向け、再び語りかけた。先ほどよりも、穏やかな口調で。
「……あなたはきっと、これから苦しむのでしょう」
 自分は一体、何を思っているのだろう。何を想い、考えたのだろう。胸に沸く熱が、体に満ちていく。
「あなたに託された夢はあまりに重い。あなたの周りにいた人間が苦しんだように、あなたもこれから辛苦の道を敷いていくのでしょう」
 すらすらと溢れ出す言葉に、やや驚いた。それは口にするなど夢にも思わなかった、突然喉が紡ぎだした言葉だった。
「あなたには何もない。その手には何も持っていない。あなたはまずその苦しみを知り、きっと手を伸ばすでしょう。そこにある光を、あなたは欲するのでしょう。喜びも希望も憤怒も絶望も何もかも。同じではいられないのです。幸福が永久に続かないように、悲しみの中に永遠に潜ることなど出来ないのです。きっと何処かで救いを求めてしまう。心が光を求めて彷徨いだす」
 苦しんでいた少年の喘ぎ声が次第に静まっていく。滔々と語る男の静かな口調は、川の流れのように続く。
「あなたはそんな己のありようを、嫌悪することでしょう。虚無の淵に立つ己が光を得るなどと自らを哂うでしょう。それでも止まらない渇望を抱えて、消えてしまいたいと思うこともあるでしょう。あなたという存在が広げる歪みを憎悪し、己の闇で人を傷つけることもあるでしょう」
 自分は、誰に向かって語っているのだろう。空洞だった筈の胸から、どうしてこんなにも言葉が溢れ出すのだろう。
「しかし、世界にいるのはあなただけではない。あなたが光輝いていると思うもの全て。そこに闇があることを知って下さい。全ては薄い均衡の上に、崩壊を恐れながら必死で輝いているものばかりなのです。眩しがって目を細めているだけでは、ただの怠慢でしかない。自ら立つ足元が心もとないからこそ、歪みを知りながら、苦しみを知りながら、それでも人は手を伸ばすことが出来るのです」
 腕を切っていないのに、全身を流れる血流の温度を感じた。これもまた、感情なのだろうか。ならば、と男は願う。
「だから生きて下さい。いつか失ってしまうのだとしても。崩壊が避けられぬのだとしても。無限の時を飛べぬのだと知っていても。最後は暗いところに落ちていくのだとしても、それでも」

 そして彼らの片隅で。

「誰かが紡ぐ光は、きっとどこかで標となる。
 だから、あなたの紡ぐ光は、きっと誰かの標となる」

 紫の鳥が、人の願いを聞いている。

 男は静かに息を吐き出した。少年の額に手を触れ、覚醒を促すように祈りを込めた。
「大丈夫、ゆっくり息を吐いて下さい。大丈夫――」


 ***


 呻き声が、他人のもののようだった。俺は目覚めた瞬間、食いしばった歯の間から嗚咽が漏れるのを止められなかった。
 あのときと同じ人の顔がすぐそこにある。それは、全てを悟った目だった。そして俺も、今度こそ、全てを知った上で目覚めたのだ。
「――っぅ、ぅあああ、あああああ!」
 全身を暴風のように駆け巡る感情は、抑えようもなかった。失ってしまった温もりは、何処にもない。もう青い双眸に見つめられることはない。全身が痺れたように熱く、いくら声を張り上げても次から次へと熱い塊が吹き出てくる。
 けれど生きなければいけないことは分かっていた。人に願われて俺は生まれ、そしてその生を再び誰かに願われた。生きて、生き続けて、紡いでいかなければいけない。
 その苦しみへの予感と、喪失の苦しみと。顔を覆い、生きる痛みを全身に焼き付けながら泣き叫んだ。

 フェレイ先生が、そんな俺をずっと抱き締めてくれていた。




Back