-紫翼-
一章:聖なる学び舎の子供たち

34.幸せそうだね



 中間考査が終わると、年に一度の祭りに向けて、にわかに学園内の空気は高まりだした。
 スアローグ曰く高等院の生徒で祭事に関わるのは一部とのことだったが、実際思っていたよりもやる気のある生徒は多いらしい。その全てが有志で、屋台をだす者、展示会をする者からはたまた演劇や演奏会を企画する者までいるようだ。
 学園の生徒活動掲示板には、我こそを見てくれといわんばりに色とりどりのポスターが押し合いへし合い重なり合い、放課後なっても残って準備に励む生徒の声がそこここから聞こえる。また、学内で有名な研究室が一団体として展示をし、大講演会とは別に教授が特別講義をするなんてイベントもあるらしい。学園祭は想像していたよりもずっと賑やかになるのかもしれない。
 ――で、なんで俺がそんなことをしみじみ感じているのかというと。
「ちょっとユラス、ちゃんと持ってよこっちが重いじゃない!」
「無理無理無理だなんでこんなに重いもの」
「だから男手呼んだんじゃないっ」
「人選ミスだーっ!」
 巨大な箱ごしに叫んだ俺の声が空しく響く。今現在、二人がかりで持つと相手の顔が見えなくなるくらいに巨大な箱をキルナと二人で運んでいる最中なのである。
 何故そんなことをしているのか。
 まず、今日は週に一度の鷹目堂の休業日である。そして、俺は突然キルナに呼び出されたわけである。で、そこでキルナがにっこり笑って言ってくれたのだ。
 ――これ、運んで欲しいのよ。
 ちなみに呼び出された場所は学園の人気のない裏手にある倉庫で、カツアゲでもされるんじゃないかとビクビクしながら向かった俺は、それを聞いてとりあえず絶句した。
 箱の中身はよくわからないが、大きさは俺の腰くらいまでの高さの立方体で、みるからに『ワタシ重いでーす』と主張するかのようだ。
 ――あたしこっち側持つから、ユラスはそっち持って。
 滝のような冷や汗をかいた俺は、念の為にそれを何処まで持っていくのかを訊いた。訊いてしまった。
 というわけで、地上四階にある教室まであと少しという地点まで、どうにかこれを持ってきたわけである。
「やばい! 死ぬ! 死んでしまうー!?」
「根性ないこと言わないのっ! 後でパフェ奢ってあげるから」
「大盛りじゃないと嫌だーっ!」
「せせこましいこと言うんじゃないわよーっ!」
 硬質な廊下の雰囲気をぶち壊す勢いでぎゃあぎゃあ騒ぎながら進む。
 聞くところによると、キルナは個人的に地域奉仕活動をしている生徒団体に入っているそうなのだ。それで今回の学園祭に当たって、活動についての展示をするらしい。だが団体には女子しかいないそうで、大きな荷物を運ぶのに困っていたときに丁度俺を発見し白羽の矢を立てた、という次第だ。ちなみにスアローグは十字を切って逃げた。ここで死んだら絶対祟ってやろうと思う。
「本当無理だこれっ! 一回降ろそう俺の腰が死ぬっ!?」
 びきびき、と腰が砕ける寸前の音をたてたその時、不意にまるで緊張感のない声が耳に入った。
「うん、大丈夫か?」
 そして、突然体が嘘のように軽くなる。目を瞬いた俺は、既に手の上に箱が乗っていないことに気付いた。
 決して箱が浮いたのではない。キルナが持っている筈の向こう側から、誰かがひょいと箱を持ち上げたのだ。そんなことが出来るのは――。
「ごぶっ!?」
 その先を考える前に、目の前にあった宙に浮いた箱が突進してきて、顔面を潰されるようにして俺は吹っ飛んだ。
「――ん? っ、うわ! ユラス、すまないいたのかっ」
「うー……?」
 頭の中でお星様が三つくらいはじけた気分で顔に手をやり、声の元を見上げる。そこには俺とキルナがあれだけ苦労して運んできた巨大な箱を一人で平然と抱えたセライムが、慌てた顔でこちらを見下ろしてくれていた。――たらりと汗を垂らさずにはいられない光景である。
「大丈夫か、ユラス」
「――お前こそ、大丈夫なのか」
 思わず聞き返してしまった。
 セライムは不思議そうな顔で首を傾げ、背後に振り向く。
「でキルナ、これは何処まで運べばいい?」
「――え、ええ。その一番奥の教室よ。……相変わらず力持ちね」
「このくらいしか取り柄がないからな」
 わざわざ悪いわね、と腰に手をやりながら苦笑するキルナに、セライムはかぶりを振って歩き出した。俺もなんとか打ち付けられた顔面と、明日からきっと痛み出すであろう腰をそれぞれ押さえながら立ち上がる。
「――最初からあいつに頼んだら良かったんじゃないのか」
「だってあの子、今日は用事済ませてから来てくれるって言ってたし」
 キルナはセライムの後を追いながら、急いで来てくれたんでしょうね、と小さく息を抜いて呟いた。
「それにあの子、手伝うって言うとどこまでもやってくれちゃうんだもの。なんだかこっちが悪くなっちゃうわ」
「ああ」
 俺も頷いて同意する。確かにセライムはそういう奴だ。
 セライムに続いてキルナと教室に入ると、10名ほどの女生徒がそれぞれ作業をしていた。普段はあまり使用されていない教室は、派手に机が脇に押しやられ、床一面に作りかけのパネルやらペンやらインクが転がっている。まさにお祭り騒ぎだ。
「あ、キルナ」
 一つ上の学年証をつけた女生徒が手を止めて顔をあげた。
「ありがとう、重かったでしょ」
「いえ、持ってきてくれたのはほぼこの子ですし」
「ちょ、俺は、ぐえっ」
 キルナはきょとんとするセライムの肩に手を乗せて、訴えかけた俺には崩壊寸前の腰にチョップを入れて黙らせてくれる。
「キルナ、他に手伝うことはないか」
「そうねぇ」
 キルナは頬に手をやりながら僅かに眉根を寄せた。
「あんまり手伝ってもらうのも悪いし。――そうね、カルメーロさんの雑貨屋に届け物だけしてくれるかしら? そしたらもういいわ、あなたカレンジュラにも行かなきゃいけないでしょ」
 キルナがセライムに色々と説明している間、踏み潰された昆虫よろしく悶えながら、ふと俺は教室にいる生徒たちがちらちら視線をこちらにやっているのに気付いた。こそこそと小さな声で話している生徒もいる。
 まあ、それもいつものことだ。茶髪か金髪が大部分を占めるこの大陸で、俺の容姿はひどく目立つ。ついでに俺ってば神秘の存在なので、いやがおうにも噂話のタネになっているのだ。

 ――あ、あれが噂のユラス・アティルド?
 ――うわー、本当に紫の髪だー
 ――知ってるー? なんか○○なこととか××なこととかしてるらしーよー

 みたいなことを話しているんだろう。とりあえず注目されてるみたいなんで、いっちょカッコいいポーズでもとろうかと思ったが、やめた。キルナに絶対零度の視線を頂くに違いない。
「よし、ユラス行こう」
「ん?」
 それにしてもカッコいいポーズってどんなものかとあれこれ思案していた俺は、現実に引き戻されて顔をあげた。セライムが小さな紙片を手にしており、キルナが呆れた表情で手を髪に突っ込んでいる。
「全く、何ぼーっとしてんのよ。あんたもこの子がちゃんと伝票を届けるの見届けたら帰っていいって言ったのよ」
「おお、マジか」
「だってあなた役に立たないし」
 そういうことはもう少しオブラートに包んで下さいとお願いしたくなるのは俺だけだろうか。
 まあ確かにここで好奇の視線を浴び続けていても仕方ない。俺はセライムと共に教室を出た。


 ***


「もう、キルナはいつまでも私を子供だと思って」
 カルメーロというお年寄りが経営している雑貨屋は、学術都市グラーシアの玄関である中央広場から大通りを南に下ったところにある。なんでも鷹目堂と同じくらいの老舗だそうで、それを思わせる趣のある構えが印象的なところだ。品揃えも良く、学生には特に割引いてくれるという気の良い店で、利用する学生は勿論多い。
 セライムはキルナから与った紙片を手に口を尖らせていた。俺もぽりぽりと頬を指でかく。まあキルナの気持ちもわからないでもない、こいつの場合万が一がありうるのだ。何でも顔を突っ込みたがるこいつは、ちょっとしたことでも足を止めてしまうので、気付いたら本来の目的を忘れて別のことに没頭してました――なんてこともありそうである。
 だから俺がお供についていくことになったのだが、実際このまま菓子屋ディヴェールに行こうと思っていたから、ついでだと思えば訳もない。
 菓子屋ディヴェールは最近都市に出来た小さな菓子屋で、若い主人が切り盛りしているのだが、これが結構うまいのだ。特にあそこの紅茶のシフォンケーキは、たっぷりと純白のクリームが乗せられていて、ふんわりとしたケーキとクリームをフォークで同時にすくい口に含むと、さらっと溶ける口あたりの良いクリームと優しい歯ごたえのケーキ、そして後からくすぐるように広がる豊かな紅茶の香りの三重奏が、食する者を夢の世界へ誘ってくれる。ちなみにこの主人、なんとグラーシア学園の卒業生らしく、学生時代の卒業研究は『砂糖の摂取における生命活動への影響』であったらしい。素晴らしい研究があったもんだ。
「そういえば秋の新作は栗がメインとか言ってたなあ」
 既に常連になりつつある俺が夢心地でぼやくと、セライムはふうと息を吐き出すようにしてこちらを見た。
「全く、お前は」
「んー? 何か言ったか?」
「いや、なんでもない」
 セライムは手に負えないな、という風に笑って前に向き直った。ほんの少しだけ、唇が続きを紡いだ気がしたが、それは言葉にならずに消えていく。俺の意識も一瞬止まったものの、ゆるやかに流れる時間にすぐに埋もれていった。
 中央広場を抜ければ、雑貨屋はすぐそこである。ほどなくして、俺たちはそこに辿り着いた。
「じゃあ、ユラスは外で待っていてくれ」
「おう」
 店の前で頷くと、セライムは長い髪を翻して小さな店の中へと入っていった。グラーシアの町並みは基本的に白で統一されているので、この店も周囲に埋もれるようにして存在しているのだが、年季の入った重々しい木製の看板が堂々と掲げられている為にそれを感じさせない。俺は奥へと小走りで向かうセライムを窓越しに見送って、ふと空を見上げた。
 グラーシアの秋は乾季の中にあるだけあって、非常に過ごしやすい。温度のせいなのだろうか。なんだか時間も心なしかゆったりと過ぎていくようだ。
 夏の熱気を諌めるような心地よい風が、都市全体を洗っていく。穏やかな色の空には、彩りを添えてその表情を歌う薄い雲。そして大通りに意識を戻せば、風があるからか薄い上着を着て歩く人も多く、風と共に目の前を流れていく。
 俺はぼんやりと、どれほどの人がこの都市にいるのだろうと考えた。英雄ウェリエルの執念とも呼べる力で成り立った巨大な都市グラーシアには、大陸中の、あるいは世界中の学者が集う。しかし彼らはどこか閉鎖的であり、外に出ることなく研究に没頭する者も多い。また、都市に多くある研究所もどれも高い塀に囲まれており、中の様子は窺い知れない。春から住んでいるというのに、よくよく考えてみれば知っている場所は都市の面積に比べてちっぽけなものだよな、と感じる。――こうやって、見知らぬ人の流れを眺めている時は、特に。
 学びの都、学問の独立――、そう謳い、実際にあらゆる実力を示しているこの都市は、しかしその中身になるとまるで底が知れない。
 不思議なところなのだろうな、と思う。しかし、目覚めてからこの地しか知らない俺には、そう思えるようになったのも最近のことだ。はじめは、この都市という世界に順応することで精一杯だった。
 それでは、都市の外には、一体どんな世界が広がっているのだろう――。
 ふと、内側に向けられていた意識が外の世界に反応した。伏せていた目を開いて、流れる人並みに滑らせる。そして、何処かぼやけた視界の中に、中央広場の方からこちらに走る影を捉えた。
「――?」
 その姿に、緩慢な動きで目を瞬く。10歳にもいかないような、ほんの子供だ。ティティルのようにこの都市で学園に通わない子供はほぼいないから、きっと幼学院の生徒だろう。私服で、しかも一人で走っているから、意識がそちらに行ってしまったのだ。
 しかし――、珍しい子供もいるものだ。髪は老人のような、色素の抜けた灰色。肌も妙に白く、まるで色彩を完全にそぎ落とした映像でも見せられているみたいだ。
 そんなことをぼんやりと考えている内に、子供が俺の目の前までやってきた。なんとなく目で追っていた俺は、その細い足が俺の目の前で止まったことで、やっと何かがおかしいことに気付く。
 言葉を紡ごうとして、失敗した。
 ――なん、だ?
 まるで五感の全てが鈍くなったように、体が思ったとおりに動かない。ガラス瓶の中から世界を見ているような感覚に襲われて、ゆるゆると目を見張る。
 映っているのは、灰色に染まった中性的な顔立ちの子供。大きな色のない瞳が、表情もなくこちらを射抜いて、目が――合う。
 世界が、歪む。
 ぞわり、と突然背筋に寒気が蛇のように這いずり回った。なのに喉は引きつり声がでない。体が自分のものではなくなったようだ。みるみる周囲の光景は闇に溶け、世界に俺と目の前の子供、二人だけになったような錯覚に陥る。
 子供の口の端が、三日月形を作るようにつりあがった。世界がぐらりと揺れて遠のく。歪んだ笑みが、幾千の刃を持ったかのようにこちらに襲い掛かる。

「――幸せそうだね?」

 それは、氷を叩くように耳朶に届く暗い闇。何故、と問う前に全身を砕かれる。
 薄ら寒い、そんなものでは済まされない。悪意の塊となった言葉が、こちらの動きを封じるように射止める。灰色の瞳孔の奥に潜む凶暴な感情が隠されることなく直接注がれて、音もなく喘ぐ。
 しかし、それも一瞬。はっと呼吸を取り戻した時、既に灰色の子供はこちらに背を向け、再び走り出していた。
「――っ」
 硬直からの開放にどっと汗が噴出すのを全身で感じながら、半ば無意識に足が動く。
「待っ、」
 もつれた舌が空回った。平衡感覚が失せている。
 しかし――行かなければ。
 俺の知らない俺が紡ぐ。
 嫌だ――行きたくない。
 俺の知る俺が紡ぐ。
 行かなければ。あの影を追わなければ。そうでなければ、永遠に傷が癒えることはない、いつかからめとられて破滅する。
 行くな、行くな。行けば壊れる。保てなくなる、か細くもろい均衡が、何もかも。やっと、この世界を受け入れたのに。
 渇望と絶望がせめぎ合い、溢れて喉の奥にほとばしる。
 なのに判断する前に、体は制御を失い前へ転がる。ふらふらと走り出したが故に、人とぶつかる。しかしそれも構わず前進する。次第に大地を蹴るようにして、前へ、もっと前へと。
 灰色の子供は色で溢れた世界に迷い込んだ異形のものとなって俺を導く。人の間をすり抜けて嘲笑うように駆けてゆく。
 頭の中で、何かの映像が散った。けれど、ただ垂れ流されるそれは理解が訪れることもなく。
 追った。ひたすらに追った。全ての思考を四散させたまま、目だけは開いたまま。


「すまない、少し手間取ってしまっ――」
 古めかしい扉を開いて出てきたセライムは、言葉を途切れさせて瞳の色を揺らめかせた。周りを見回すが、夕方の人の多い時間帯、目の前にはよく見知った大通りの風景が広がるばかりだ。そこにいるはずの紫の影が――ない。
「ユラス?」
 呆然と呟いて、彼の良く目立つ色を視界の中に探す。しかし、まるで初めから誰もいなかったかのようにセライムは一人だった。
「……」
 おかしい。確かにさっきまで、ここで彼はのんびり立っていた筈だったのに。
 前を、見る。横を見る。背後を振り返る。
 涼やかな青の双眸が、再度揺れた。見えるはずのない景色をそこに映し、震えるように顔を歪める。
「――」
 他人が見れば妙ともとれるほどに真っ青になった少女は、焦燥にかられたように駆け出して隣の店の窓を覗いた。反対側の店、向かい側の店。待っていると言っていたはずなのに、それなのに。
 どこにも、いない。
 どこにも、いない――?
 置き去りにされた少女は、ひとり。ふつりと糸が切れたように暫く色を失い――肩が震えだすのをこらえきれずに、それでも強く目を閉じて首を振った。あのときとは違う――違うのだ。あの少年のこと、きっと急用でも出来たのだ、そう何度も心の中で唱える。
 けれど、刹那のことだとしても彼女の心を襲ったその感情は、彼女の記憶を揺さぶって、世界から光を奪っていく。
「……ぁ、」
 そうだ。あの時もそうだった。気がつけば、いなくなってしまった。あの大きな背中。いつだって、一人は嫌だったのに。本当は、何処にも行ってほしくなかったのに。
 皆、皆。自分を置いてどこかに行ってしまう。そのたびに自分はこうして何も分からないまま置き去りにされて、一人にされて――。
 鮮やかな青の双眸が暗く濁るその時、それは空から襲来した。
「――?」
 風を切る音。弾かれたように見上げると、それは急な滑空に翼を大きくはためかせて、彼女の脇をすり抜けていく。
「わっ」
 突然の気配に肌を粟立たせて飛び上がった彼女は、それが再び空へ舞い上がっていくのを捉えた。
 舞い上がる影を、青の瞳が始めて映す。紫色の鳥だった。あの珍しい鳥は、確か彼が連れていた――。
「――セ、ト?」
 教わった名前を、噛み締めるように口ずさむ。紫色の鳥はセライムの頭上高くで円を描くように何度か旋回すると、一目散にある方角へ飛んでいった。
「……」
 暫くそれを言葉を失ったまま見上げて、セライムは空から呆けた顔のまま地上へと意識を戻した。
 何故だろう、胸騒ぎがする。形のない不安はじわじわと体から温度を奪い、無意識にごくりと息を呑む。
「なんだ――?」
 呟いた言葉ですら嘘のように震え、その事実に驚く。どうしてあの鳥が見えただけなのに、こんなにも恐怖を覚えるのだろうか。
 彼は――、彼は、一体、何処へ行ったのだ?
 セライムは豊かな金髪に細い指を差し込んで、こめかみを押さえた。
 じわりと頭の中から滲んだそれは、少女の四肢に指令を下す。何故そう思えたのか、まだ彼女は理解していなかった。けれど、理由を伴わないものとして、意思の塊だけが胸に落ちた。
 セライムは、頭を強く打ったような衝撃にかられながら、セトが去った方向を見つめ――そして走り出した。




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